日本では、離婚前後に一方の親が子どもを無断で連れ去る「実子誘拐」が長年“民事トラブル”として扱われてきました。しかし国際的な視点に立つと、この扱いは大きく遅れていると指摘されています。欧米諸国では親による連れ去りも重大な犯罪として扱われ、子どもの心理的苦痛や生活環境の断絶が「児童虐待」に相当すると明確に位置づけられています。
特に欧米では、親権の有無にかかわらず、子どもを一方的に生活環境から引き離す行為は“権利侵害”と考えられ、刑事罰の対象です。背景には、親子関係の断絶が子どもの心身に深刻なダメージを与えるという科学的知見があります。そのため、司法機関は子どもの権利を守ることを最優先にしており、国や州レベルで迅速な保護措置が取られます。
一方、日本では、親による連れ去り行為に対する法的評価が遅れ、結果として長期間の親子断絶が放置されるケースが多数あります。この状況は国際社会からも問題視され、近年は国連人権機関が日本に対し「実子誘拐への防止措置を強化するよう」勧告を行うなど、外交的な関心事にもなっています。国境をまたぐ連れ去り事案では、海外から「日本は親子引き離しを容認する国」と批判されることも少なくありません。
子どもにとって必要なのは、どちらか一方の親だけではなく、継続的で安定した人間関係です。実子誘拐を犯罪として扱う国際的な潮流は、まさに子どもの権利を守るためのものと言えます。日本でも共同親権制度の導入など前進は見られますが、子どもの権利を中心に据えた法制度と運用が求められています。
